いつもその日塗る予定の反対側に軽トラックを置いて、そこからロープを伸ばし、屋根の一番高いところを越してから、自分の腰に巻いて命綱もどきにした。
高いところは怖くて嫌いだし、キズだらけのトタンをなるべく塗りつぶすという意外に細かい一面もあって、作業はぼちぼちだ。しかも勾配が相当あるので腰が引ける。不自然な姿勢はすぐ腰が痛くなり、長時間はできない。
それでもやり続けていたら、いつかは終わるものだ。「一生懸命やればあと数日で終わる」と宣言してから先の長かったこと。ああ、完了記念パーティでも開いてやれば良かった、などと今更思う。
その日の夫は、寒かったから、疲れたからに加え、安堵感もあったのだろう、私が暗くなって外から家に入ったら、あれ?茶の間に居ない。2階にも風呂場にも気配がない、どこだ?と探したら、寝室で寝てた。夕方に寝てしまうなんて滅多にないことだ。
「今年の雪下ろしは慎重にしないとなー。」
そう、ペンキは屋根を丈夫にし、雪の滑り具合を良くする。屋根の直下は雪を残して、仮に落ちても大事に至らないように気をつけなくちゃ。
田舎暮らしは慎重すぎるくらいがちょうどいい。